インタベンションの実施は、個々の依存症者、ご家族の状況によって異なります。
ご家族と当事者の状況をよくお聞きした上で、もっとも合う方法をそれぞれのケースにあわせた形で考え、臨機応変にインタベンションを行います。大きくは以下のような流れになります。
インタベンションや回復に対するご家族の不安を取り除く
ご家族は本人を回復への手段に繋げたい思いとともに、大きな不安をたくさん抱えていらっしゃいます。たとえば薬物依存であれば「本人が逮捕されるのでは?」、薬物やアルコール依存で本人が家庭内で暴れることがある場合「事件を起こすのではないか」「他人に危害を加えるのではないか」、ギャンブル依存で消費者金融などへ多額の借金をしてしまっている場合もあります。
まずはご家族への介入を行い、インタベンショニストが面談やお電話でのフォローなどを重ね、一つひとつご家族の不安に対処いたします。
ご家族のみならず、ご本人に関わっている方ということで、勤務先の方や恋人、パートナー関係にある方にもご参加いただけることが望ましいです。
ご家族の決心が確認できたところで、本人へ介入し適切な回復手段へと繋げる
ワンネス財団の各回復支援施設でお引き受けいたします。下記の施設を設けています。
ワンネス財団の依存症相談ダイアルにいただくお電話の8割が、ご家族からのご相談です。みなさん、依存症者本人が問題で、とにかく当事者をどうにかしたい、と助けを求めてこられます。
しかし、依存症回復支援、なかでもインタベンションにおいて要となるのは、依存症当事者よりもむしろご家族です。まずはご家族の決心。当事者の決心が必要となるのは、インタベンション後のことです。
なぜなら、依存症においてよくあるケースにご家族が当事者に対してよかれと思って行っていること、援助や気遣いが、かえって依存症を加速させている場合がよくあるからです。
たとえばギャンブル依存症者の家族が当人をなんとかしたいという一心で、「お金さえなんとかしてあげればギャンブルをやめてくれるだろう」と、金銭的な援助をしていたり、生活の面倒を見ていたりというケースがよく見られます。また職場の上司が「給料を前借りさせてくれ」と言われ、それを許してしまっていることもあります。
ご家族や周囲としては、それが本人のためになると愛情から行われていることでも、実はそれでますます本人が依存へと溺れることになっている…。
大変ショックで受け入れ難いことでしょうが、そうした行為は依存症の専門用語では「イネイブリング」、イネイブリングを行う者は「イネイブラー」と呼ばれます。この行為は当事者の依存を加速させるだけであり、すでに当人とご家族らが「共依存」と呼ばれる、負の相互依存状態に陥っています。
まずはこの悪循環をご家族が冷静に客観視し、事態を正しく把握した後、まずは断ち切らねばなりません。それには当事者との間に一時的に軋轢も生じることがあります。しかし、それは回復への第一歩を歩むため。だからこそ、まずご家族の覚悟と決心が必要です。
当人は「依存症」という脳の病気、精神疾患に罹っており、依存症は適切な治療を受けずに放っておけば死に至る病です。
ですから、いままで家族が行ってきたことを止めるという、揺るぎない覚悟を持っていただかねばなりません。
「そんなことをしてはかわいそう」「当人が生きていけなくなってしまうのでは」「死んでしまうのではないだろうか」とか「出て行って事件を起こしたり、他人に迷惑をかけたりしてしまうのでは」とか「見捨てられた、裏切られたと絶望するのでは」「恨まれるのではないか」などと不安になるのは無理もありません。
しかしこれは決して「本人を見捨てる・切り捨てる」ということではありません。
ご家族はご本人のことを愛していらっしゃることでしょう。だからこそこれまでの経過があったはずです。でもこれまでのご家族の愛情あるからその対応が、決してご本人のためにはならず、かえって依存症という死に至る恐ろしい病を加速させる、という不本意な結果を招いてしまっていた―ご家族はそのことに気付いた。だから「新しい愛情のかたちをもって、本人の命を繋ぐ」という選択をするのです。
ですから、まずはご本人に「愛している」ことを伝えていただくことです。
「愛している」こと、「これまでの愛のかたちが不本意にも病気を支援することとなってしまっていたことに気付いた」こと、だから愛しているからこそ「もう病気の支援はしない」―伝えなければならないのはそういうことです。
大丈夫です。私たちインタベンショニストがついています。私たちとともに一歩を踏み出しましょう。
なおご本人への介入では、初回で接触できない場合はいくらでもあります。
でも私たちはいまがそのタイミングではなかっただけで、いつかどこかでかならず機が巡ってくると信じています。
たとえ一度や二度の接触を試みてご本人にお会いできなかったとしても、いつかそのタイミングが訪れたときに、すでにご家族への介入がなされているのといないのとでは、治療への繋がり方がまったく違ってくるのです。
ですから、私たちはあきらめません。
私たちと一丸となって、決して諦めずに、依存症者ご本人もご家族も、人間らしい愛情に溢れた豊かな人生を目指していきましょう。