インタベンショニストとして、日々たくさんの依存症当事者とご家族に出会います。
当事者は一様に、自らの痛みにさえ気付かず苦しんでいます。痛みを麻痺させて生きていくことしかできずにいるのです。すべてに怒り、孤独や疎外感、悲観することから抜け出せずにいる。苦しみに耐えられず、絶望感のなかで、自死を図ろうとする人もいます。
インタベンションとは、その負の連鎖に新しい息吹を与えるものです。難しい技術ではなく、心で寄り添い、心と心の繋がりを持つことだと感じています。
当事者は表面的には怒りや絶望感、恨みなどに覆われています。周囲に対し攻撃的な感情表現しかできずにいるかもしれません。
しかし彼らの内側によく目を向ければ、悲鳴、「助けてほしい」という声が聞こえてきます。
僕たちインタベンショニストの役割は、いかにその声に気付き、寄り添うことができるか。そして愛をもった強さで、当事者の問題に向き合っていくことができるかだと思っています。
実は僕自身がかつて薬物依存に苦しみ、ワンネス財団代表と社団法人GARDENのスタッフのインタベンションによって救われた経験を持っています。インタベンションをきっかけに回復への道を歩み、いまインタベンショニストとして、過去の自分とおなじように苦しんでいる方々の回復を支援させていただいています。
13、4歳頃に薬物に手を出してから、その後の人生は完全に薬物に支配されていきました。22歳になる前までの9年間、薬物をやめることができず、解決策の術もなく絶望していました。
「あなたは依存症という病気なの」…、そう言われても、僕の心は動かされませんでした。人生を諦め、毎日死を考えていました。生きる希望などありませんでした。
僕の生きる術はただ薬を使うこと、使うために生きるしかないと思っていました。毎日、怒りと苦しみ。孤独が怖くて、恐れをごまかすためにまた薬を使う。
21歳の年始から数週間が経とうとするころ。一緒に住んでいた母親に怒りをぶつけました。
「お前はいいよな! 相談する相手がいて、仲間がいて。俺には誰もいないんやぞ」
当時の自分はSOSを“怒り”で表現することしかできませんでした。心のなかでは悲鳴を上げて、助けてくれと叫んでいるのに。
その一週間後。人生を大きく変える日が訪れました。
僕の家を訪れてくれた、ワンネス財団代表、そして社団法人GARDENのスタッフ。生きることに絶望している僕へ手を差し伸べてくれたのです。
「映人、もういいだろう。一緒に回復しないか」
そんなシンプルな言葉を投げかけてくれました。
その日、2012年1月27日から、僕はいっさい薬物を使うことなく、希望を持って毎日を歩んでいます。薬物をやめることそのものよりも、僕にとっては希望を見つけ、そして感じることが必要でした。インタベンションを受けて回復に向かうことで、それを得ることができたのです。
依存問題、生きづらさを抱えている当事者の人生を、僕が代わりに生きることはできません。しかし彼らが、自分のうちに希望を見つけ、依存症という病に支配されず、自由に生きていくための“案内役”になれればと、僕も日々歩んでいます。
僕は、すべての人に無限の可能性があると思っています。ただその可能性に気付かずに諦めてしまう人、「どうせ自分にはできない」と思っている人たちがたくさんいると思います。
“自分の人生を生きはじめること”――誰かのための人生ではなく、自分の人生をです。
そのことに気付けたいま。僕は依存症であった過去も含め、自分という人間に誇りを持っています。そしてインタベンションに希望を感じ、さらなる可能性があると信じています。